新しい組織が出来て、その初代トップになられた方にお伝えします。組織を立ち上げて成果を出すまでの道のりは大変ですよね。その中でも経験によって再認識した『トップが最優先すべきこと』について記します。
それは『嘘』や『誤魔化し』を絶対に許さないという『信念』を持ってスタートさせることだと言えます。企業用語で言うならば『虚偽の報告』や『データの改竄』という表現になるかも知れません。それは仲間を信じないということではありません。『基本の統一』です。わかりやすい言葉で伝えることがちょっとした業務の中でも『生きた合言葉』となって守られていくものです。
いつまでも続けたい3つの習慣 “ 始まりは小さな感動から ”
自分の人生を汚してはならない “ 自身を律する3つの約束 ”
目次
1. その背景にあるもの
『全ての不祥事』と言っても過言ではないと思っていますが、多くの企業不祥事はここから始まっているのです。どうしても人は安易な方へ行きがちであると言わざるを得ません。いつの間にか隠蔽体質が芽生えて、そこから企業不祥事へと繋がっていくのです。しかも歴史が長い会社であっても一瞬で吹っ飛びかねない事態を招くのです。
信頼を得るには長い時間と大きな労力を要しますが、信頼を失うのは一瞬なのです。そこから再び立ち上がっていくのは並大抵のことではありません。
そのために、新組織は歴史の始まりになるので、最初に癖をつけて(習慣づけて)行くことが必須です。そうでないと途中から切り替える時には、既にトラブルが発生していると思われます。スタートが肝心なのです。
2. 平易な言葉が共通認識に繋がる
例えば「コンプライアンスの徹底」などと伝えても、それは聞き慣れた言葉であり、それこそ「当たり前でしょ」となってしまいます。それなのにコンプライアンスと表現すると、人それぞれで思い浮かべる内容が違うのは間違いのないことです。何だか「うん、コンプライアンスね」で理解した気になってしまうのです。そこが危険なのです。そして徹底されない要因となるのです。
しかも新しい組織は寄せ集めのメンバーになることが多いです。それぞれが異なった教育を受け、違う職場環境で育って来ています。そこで『共通認識』を持たせるためにも簡単な言葉で迷うことのない基本を徹底することが大切になるのです。
3. 信頼関係の基本
人と人もそうですが、会社と客先の関係もこの『嘘』や『誤魔化し』があっては成り立ちません。よって、そこがしっかりしていないと、何をやっても問題が起きてしまいます。その上、原因が明確にならずにしっかりとした対策が取れないので、その問題や失敗が続くことになります。
ここはトップが自ら「責任は全て自分が取る」と明言することで、『嘘』や『誤魔化し』がなくなり、小さなミスも報告に上がって来るような組織にしていくことがトップの責任でしょう。
4. それでも大きな失敗を招く
自分の経験でもそうでした。何故かしら失敗が続くのです。そのために数億円の損失を出してしまいました。やはり主因は『嘘』と『誤魔化し』だったのです。「これくらいは問題ない」で育った人の感覚を変えるのは非常に困難と言わざるを得ません。だからこそ「それがダメなんだ!」ということを絶えず言い続ける必要があるのです。
そして、失敗が発覚した時のトップの処理の仕方を部下の目に焼き付けるのです。苦しむ姿も見えるでしょう。そうしてやっとトップが最初に言っていたことを理解してくれる仲間の組織になって行くのです。
残念ながらそんなものなのです。しかも、私自身はこの記事に書いたように最初から信念を持ってやって来たにも関わらずなのですから。
これらの失敗はお客様に手渡す前だったので、幸い不祥事には至りませんでした。直前の最終チェックで判明したのです。
5. 信念を貫くことは傷つくことでもある
トップの背中を見ることで、部下はその基本を脳裏に植え付けます。そして、逃げないトップだと思うことで報告も入ってくるようになります。ものが言いやすい上司にならないといけないですね。叱っても怒ってはいけません。『怒るは感情、叱るは愛情』を念仏のように唱えて、自らを律していく必要があります。
人はどうしても楽な方向に流れて行こうとします。目先だけに捉われ、それが及ぼす影響まで考えようとしないのです。しかし、50代の人でも変わって来ます。嘘をつくのはある意味で楽かも知れないけれど、それよりも嘘をつかなくて済む環境はもっと楽なのですから。それが証拠に、一度嘘をついたらどんどん嘘を重ねることになるので仕事が増えて行き、精神的にも追い詰められて行きます。
しかし、組織を軌道に乗せるまでにはトップとして傷つくこともあります。それでもみんなの前では笑顔を見せて、「これで大丈夫だ。みんな誇りを持ってやって行くぞ!心配するな!」と声を掛けます。そうして心底から笑える組織へと変わって行くのです。
しかし、このような経験をした自分はトップを退くことにしました。利益回復の目処をつけ、さあ、これから安心して楽しくやって行けるぞという時だったのですが仕方のないことです。何らかの責任は取らなければなりません。
6. 終いに
新設組織の初代トップに立った時の心構えとしては沢山の項目があるでしょう。新しい組織や新規事業を始めるときに大切なことは明確になっています。それでもこの「これくらいは問題ない」と言う思考、『嘘』や『誤魔化し』を許さないという平易な言葉での『ルール』を守ることは多くの基本となります。
この行動を言い換えれば、『誠実にプライドの持てる仕事をする』ということになろうかと思います。
その組織を離れて5年。激論を交わしたこともある立ち上げ時の部下から、思いがけないメールが届きました。何だか、私の名前が載っている本が出たので読んだとのこと。現役時代の会社の記録みたいなものです。「久しぶりに感動したのでメールしました」と言ってくれました。
本当に救われます。
今回もここまで読んで下さり、ありがとうございます。
2024年5月15日 さえき ひかる
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