自分は雰囲気に呑まれてしまうことが多いと思っている方はおられるでしょうか。それは楽しさと愉快さの高揚感の中で生じるのです。ひょっとしたら『ドキドキ感』もあるでしょうね。
素敵な雰囲気の初めてのお店でとても美味しく戴いた料理と赤ワインに纏わる経験から、真実を実感しました。
皆さんは「あー、騙されたあ!」と嘆いた経験はあるでしょうか。今回旅先で、私も最初はそう呟いたのです。しかし、冷静になると誰も私を騙そうとして何かをしている訳ではないし、私も騙された訳ではありません。そう自分が思い込んだだけなのに「あー、騙されたあ!」と一瞬でも思ってしまう浅はかさに情けなくなりました。どんなことでも何かのせいにしているっていけませんよね。
でも次の瞬間には、「(上手く)やられたあ!」と感情が変わり、最後には「完全に雰囲気に呑まれてしまったなあ」と『笑い話』に変わって行くのです。
しかし、真実は違ったのです。
それは旅先のレストランでのことです
失礼の無いように最初に伝えておきますが、そのお店には一切の責任も不手際もありません。今でも一流のお洒落なお店だと思っていますし、もう一度行こうと家族で話しているお店です。
それでは何が起こったのか、どうして『雰囲気に呑まれてしまう』と言う言葉が出てきたのかに触れます。
そのレストランはあの競技場を設計した有名な建築家がデザインを手がけたホテル内にありました。一度行ってみたかったと言う娘夫婦に誘われて4人で出掛けることに。もう外観からその設計者を思い起こさせる造りになっています。素敵だなあと感じながらエレベーターホールへ。エレベーターを降りてからそのレストランへ向かう通路も洒落ています。お店の中も雰囲気がもう和と洋が溶け込んでいて、とてもお洒落な感じです。何か現役を退職してからは味わったことのないような世界がそこにはありました。そしてスタッフの皆さんもきちんとしていて素敵な方々です。
ひょっとしたら既にこの時点でその雰囲気に呑まれていたのかも知れません。でもこれこそがお店の演出なのです。そんな雰囲気を醸し出し、客を気持ち良くさせてくれる接客術とサービス。仕事仲間ではなく家族だということも更に気持ちを高揚させてくれたのでしょう。
赤ワインを飲むことになりました。テイスティングは娘婿が慣れた仕草でこなして銘柄を決定。(その時のテイスティングの量の少なさに私は驚いたのですが)
グラスワインにしました。(何かこれまた量が少ない)とても良い香り。妻はお酒がダメなのですが、先に一口勧めました。「美味しい!」と。私も然りです。自分の中ではこんなに美味しい赤ワインは初めてだとさえ思ったほどです。肉を食べながら、ワインをじっくりと味わって、それは最高の会食でした。
雰囲気もその料理も流石でした。ここまで出されるものの一つひとつが「これは!」と思わせてくれる経験は初めてです。中には一つくらい『普通』に感じる料理があったりするのですが、このお店の料理はどれもこれも私たちみんなの舌を堪能させてくれました。口に入れて少し経った時にその味で驚かせてくれるのです。
さて、気持ち良く会食が終わり、会計を終えた後の帰り道に『笑い話』があります。次の1シーンとその余韻です。
「あの赤ワインは1杯いくらだったの?」と娘から。
「1,500円だねえ。流石に美味しかったねえ」それを聞いてネットで調べる娘婿。
「えー!この赤ワイン、ボトルで1,500円で売られているよ!」
みんなが、「えー!本当に?」と。
なんか貧乏臭い話で情けないですが、これには驚きました。あまりの雰囲気の良さに味覚まで『雰囲気に呑まれてしまったか』と。
しかし、記憶を辿ると、あのワインの勧め方、量の少なさ、そしてラベルの輝き!それがまるで演出されていたようにさえ感じるのです。これこそが一流レストランと言われる所以なのだと。
後日、旅先から帰って私が住んでいる街の6店舗のお店でこの時の銘柄を探しました。しかし、どのお店にもこのラベルの赤ワインは置いてありませんでした。ネットでは販売されているので、ここにもあの『一流レストラン』であんな低価格の赤ワインを出している戦略というか、それを見出すことの出来る力を持っている、それこそが『一流の証』なのだと納得してしまいます。それもこれも含んだ赤ワインのお値段なのですね。
今は『笑い話』として友達に話していますが、あの時の『赤ワイン』は相当高いものだと思っていました。私なぞは、そのレストランの会計時に「あの赤ワインは特に美味しかったわ。ありがとうね」とまで言ってしまったのですから、もう『未熟者!』です。きっと笑われてるわ。いえいえ、笑ったりはしないなあ。自信を深めたに違いない!とそう思いたい気分です。
・終いに
実は赤ワインだけでなく料理も大したことはなかったんじゃないのと思われてしまいそうな私の舌で情けないのですが、間違いなくとても美味しい料理でした。それを示すかのように私たちの周りは外国人が多かったのですが、満席で皆さんも笑顔に溢れていましたから。勿論、あの赤ワインを飲んでる方もおられました。その味は間違いないはずです。
良い歳して、雰囲気に呑まれてしまう年金生活者で情けないですが、まだまだこの先、同じような楽しいことがいっぱいあるように思います。
いずれにしても、雰囲気に呑まれてしまうことは決して悪いことばかりではないようです。
“ 後日、追記 ”
「その料理に一番合っているワインを提供する事こそがワインソムリエの腕」とか。納得です!その後、ネットで注文して2本飲んでみましたが、その美味しさは半減した感じです。やはり、ワインには雰囲気とそれにあった料理があってこその美味しさなのだと痛感しました。
まさしく『料理との相性でワインはより美味しくなる』の真実を体験したのです。今後は美味しいと思ったら、その料理の時に追加して飲むべきですね。ワインの蘊蓄を語る人がいますが、きっとこの『相性』にも秀でてると思われます。奥が深いものだとはわかっていますが、中々にマスターはできませんので、ここはお店の方にその料理にピッタリのワインを選んでもらうのが正解ではないでしょうか。
どうか皆様もこんな新鮮な出会いを楽しみにして、初めてのレストランを訪れてはいかがでしょうか。勿論、雰囲気には呑まれませんように。
今回もここまで読んで下さり、ありがとうございます。
2023年10月20日 さえき ひかる
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